平成22年7月1日公開
今世紀に入って東南アジアと北東アジアが「東アジア」という新地域としてまとまる機運が醸成されつつあります。2005年には「東アジア・サミット」が史上初めて開催されました。ASEAN(東南アジア諸国連合)は着々と各国と自由貿易協定を結んでいます。また、この地域の中核をなす日中韓は今年(2010年)5月末に、今後10年間の3ヶ国の関係発展をめざす「日中韓協力ビジョン2020」を採択しました。日本の政権担当者は、経済面にとどまらない東アジア諸国との連携強化(「東アジア共同体構想」)を打ち出しています。
とはいえ、東アジア共同体をどう構築するかを考える際、域内に著しい対照性があることも見逃せません。北東アジアには、依然として冷戦構造をひきずる緊張した国際関係が続いており、安全保障と歴史認識という要因がこの地域の一大問題であり続けています。他方、東南アジアには、ASEANを中心に国際関係の緩和が進みつつも国内政治体制の脆弱性や貧富の格差問題が根強く存続しています。「東アジア」として一括りするには、文化面のみならず、政治・社会的にみてあまりに多様な面があることは否めません。こうした点を考慮すると、東アジア共同体は、貿易と直接投資の相互依存関係として深まっている「東アジア経済共同体」として形成されていくほかないでしょう。
したがって東アジア共同体を構想する場合には、第二次世界大戦後に「不戦の共同体」として出発し、関税同盟から市場統合を、そしてついには通貨統合に至ったヨーロッパ連合(EU)50余年の経験から大いに学ぶ必要がありましょう。そこで本公開講座では、まずはヨーロッパの統合経験の諸相について考察し、それとの対比で東アジア共同体の現況と課題について論じます。ヨーロッパはどのような経緯で地域共同体を形成していったか、共同体形成のなかで通貨統合はどのような意味をもったか、今日のギリシャ危機をまえにEUはどのような課題に直面しているかについて、まずは考えます。ついで、東アジア共同体の可能性と課題について多角的に論じます。グローバリゼーションが進む現在、共同体構築のためには、「開かれた地域主義」を標榜するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)との関係をどう考えるかも欠かせない問題でしょう。この講座では、前半ではヨーロッパの統合経験を、後半では東アジア共同体の展望を主題としつつ、ひろくグローバリゼーションと国際地域社会との関連について考えます。
多数の皆様の積極的なご参加をお待ちいたしております。
10月16日(土) | 共通論題:ヨーロッパの統合経験 |
司会: 内山 哲彦(千葉大学法経学部准教授) | |
講師: 古内 博行(千葉大学法経学部教授) | |
講師: 藤澤 利治(法政大学経営学部教授) | |
10月23日(土) | 共通論題:東アジア共同体の展望 |
司会: 古内 博行(千葉大学法経学部教授) | |
講師: 石戸 光 (千葉大学法経学部准教授) | |
講師: 山澤 逸平(一橋大学名誉教授) |
申込送付先: |
〒263‐8522 千葉市稲毛区弥生町1番33号 千葉大学法経学部学務グループ 電話 043(290)2350 FAX 043(290)2356 E-mail bhgakumu@office.chiba-u.jp |
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千葉大学法経学部学務グループ
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