ラオス国立大学経済経営学部教員に対する農村経済実態調査トレーニングを実施しました
神戸大学国際協力研究科では、ラオス国立大学経済経営学部 (Faculty of Economics and Business Management: FEBM) に対する支援事業の一環として、FEBMの若手スタッフ5名を対象に、農村経済実態調査トレーニングを実施しました。本トレーニングは、国際協力研究科のフィールド実習講義と組み合わせる形で行われ、同研究科からは3人の大学院生が参加しました。期間は3月26日〜4月5日の12日間、場所はラオス北部Luang Phabang県内の焼畑地域村落でした。
多くの発展途上国経済に共通の特徴として、経済全体に占める農村部門の比率の高さがあります。例えばラオスでは、勤労人口の約8割が農業に従事しています。一方、国内総生産に占める農業の割合は約5割で、貧困層の多くが農村に集中していると推測されます。特に、山岳地形が連なるラオス北部では、さまざまな要因で伝統的な焼き畑農業の周期が短くなってきており、森林消失と農業の生産性下落という二重の問題が発生しています。
このように、貧困・環境問題双方で重要な途上国の農村経済ですが、その自給自足的性格・アクセスの難しさから、公式統計ではなかなかその実態を把握できません。農村経済実態調査は、質問票を用いた農家へのインタビューと、生産高や土地面積の実測を組み合わせることにより、農村経済の実態に迫ろうとする手法です。今回は、国際協力研究科の橘永久が、国際協力事業団(JICA)の短期専門家として、「実際の調査で使える質問票の作成」を目標に、トレーニングを行いました。準備段階では、JICA長期専門家としてFEBMの支援にあたってこられた松永宣明同研究科教授ならびに浜渦哲雄元広島大学大学院教授から、ご支援をいただきました。
さらに現地では、JICAが実施しているForest Management and Community
Support Project (FORCOM) のご支援をいただき、Luang Phabang 市内から車で山道を2時間程行った所にある村落を紹介していただきました。初日に岩佐正行リーダーをはじめとするFORCOMのメンバーから現場に関する講義を受けた後、2日目からは連日村を訪れ、32戸の農家を対象とした予備調査の他、郡庁・郡の農政森林局への聞き取りを行いました。農家予備調査では、利用している土地の種類・植え付け作物の選択・非木材生産物(NTFP)の収集と販売活動に焦点をあてて、インタビューを実施しました。
参加者は、トレーニング開始後6日目に、それまでの聞き取り内容を元に質問票の第一稿を作成しました。以後は、日中の聞き取り調査で質問票のプリテストを行い、その後連日夜11時までのミーティングを実施して、質問票の改定を重ねました。4月4日に、対象村落が所属する郡の郡庁とFORCOMへの報告を行い、翌5日には、FEBMにおいて最終報告会を実施しました。
ラオス国立大学経済経営学部 (Faculty of
Economics and Business Management: FEBM) に対する国際協力研究科の支援は、JICA との協力のもと、1998年より継続して実施しています。同研究科太田博史教授が支援事業の業務主任を勤め、同研究科国際開発政策専攻の教員が交代で、JICAの長期専門家としてFEBMに派遣されています。3月12日から8月末日までは、松永宣明教授の後任として、橘永久がFEBMに駐在しています。
(国際協力研究科助教授・橘永久)