「善と善との対立を考え抜こう!」

橘 永久
遠い昔の自身の大学生活を振り返ると、最も印象に残っている講義の一節は、「善と悪との対立など問題ではない。問題は善と善との対立である。」というものでした。社会科学を一通り学んだ今となっては、「当たり前じゃん」と素直に頷けるセリフですが、二十歳になるかならないかで聴いた時には、「えっ」と思ったものです。
例えば千葉大学を含む国立大学法人は、政府からの交付金(=補助金)削減により、財政状況が厳しくなってきています。法政経学部は、主に効率を高めることで教育・研究水準を維持できるように尽力しています。こうした状況下で、大学教員としての私は、高等教育の重要性を踏まえた国立大学法人へのより多くの予算配分がやはり必要である、と主張しています。
しかし、定年後の生活を考える高齢者としての私は、税金が上がるのは困る、とも思います。また、日本で大学を卒業すると、高卒者に比べて平均で約5千万円生涯所得が増える、と推定されています。大学進学者がこの所得増を享受するのだから、進学者やその家族が高等教育費をもっと負担すべきだ、という意見もあります。いずれも、社会をより善きものとするための、それなりに筋の通った考え方です。
善と善が対立するのですから、完全な解決策はありません。社会科学とは、「~の前提・考え方ではこうした社会制度・政策がより望ましいが、別の考え方もある。どうしよう」を考え抜く学問です。
法学、政治学・政策学、経済学、経営・会計学という4つのコースを有し、社会科学の諸分野を、広く浅くも狭く深くも学べる千葉大学法政経学部は、「善と善との対立」を、なんとかかんとか解消していくために必要な基礎を身につけるのに最適な学部です。入学後最初の1年間は、どのコースにも属さず幅広く社会科学の諸科目を履修することで、2年次からどの分野を主に学ぶかをゆっくりと考えることができます。他コースの科目履修も容易で、さらに、3・4年生になってからのコース変更も可能としています。
こうした学際性を誇る法政経学部で、皆様と共に学べる日がくることを願っています。